智恵子 3月の絵日記から

まだ雪が沢山あるベランダに

ミソサザイが来て尾羽を立てた

新しいやかんを買った 

抜けていた前歯に待望の歯が入った

久しぶりに五色温泉へいった

肌がつるつるになる湯で硫黄の匂いが強い

愛媛産のキウイを食べた

遠近両用の眼鏡を作った

老眼で見る部分が狭いので慣れるまで時間がかかりそうだ

釧路産の宗八カレイを食べた

泥のごと重き眠りと眠れぬ夜反復するはこの頃のこと

一ミリほ程を日数重ねてようやくに花弁ひとひらほどけはじめる

春日和静かに花弁うごきはじめうちより唇弁(リップ)の吐息はもれぬ

雪晒れしミズナラの枯れ葉いきものに似て堅くしまった雪面を走る

からまつの木立の向こうに落ちる陽は大気ふるわせ終章に向かう

手慣れたるトランプきりて恋占いほのかに覚ゆ胸のときめき